黒猫陛下の書斎

「試筆」とは、試し書きのことではない。

エクリドール・ローテーションのペンシルを探す

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D'où venons-nous ? Que sommes-nous ? Où allons-nous ?――ポール・ゴーギャン
(我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか)


目次


1. 蔦屋書店での試し書き

3月、出張ついでに東京の蔦屋書店に立ち寄った。目的は二つあった。一つは、手紙のやり取りなどもしている文具売場のコンシェルジュに久しぶりにご挨拶すること。もう一つは、カランダッシュのペンを見ることだった。
すでに記事にした通り、おととしから、手帳はPLOTTERである。PLOTTERを使い始めて以来、シャープペンシルの正解を常に追い求めている。手帳にはもちろん万年筆も使うが、未来の予定はコロコロ変わるので、万年筆で書いてしまうとあとで消せなくなってしまう。なので、いつでも書き直せるペンシルは必須であると考えるようになった。かつては未来の予定も万年筆で書いていたことがあった。それであまり不便が生じなかったのは、決まったスケジュールで働く仕事をしていたからだと思う。だが今は違う。書き直しができるペンといえば「フリクション」もあるが、あれはいくつかの理由であまり好きではないので、鉛筆かシャープペンシルが選択肢として残る。トンボ鉛筆の「モノグラフ」を使っていることは、すでにブログに書いた。これは正解の一つだと思う。特に消しゴムの使いやすさが抜群で、これと同じくらい消しゴムが使いやすいのは、おそらくぺんてるシャープペンシル「タフ」以外にない。

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モノグラフは気に入っているが、欠点もあった。まず、軸がやや太い。用途が手帳用なだけに、手帳のペンホルダーに挿せないのは、かなり大きなマイナスである。いま使っているペンホルダーは、アシュフォードの「0065-100」で、内径は10mmである。モノグラフはギリギリ入らない。仕方なく、ペンのクリップを手帳のリングに差し込み、一緒に持ち歩いていた。これだと、手帳を閉じたときに、ペンの分だけ厚みが出てしまう。あまりスマートでないが、これ以外に方法がなく、困っていた。

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次に、軸がやや長い。PLOTTERのミニ6サイズは、縦が138mmある。それに対し、モノグラフは全長147mmあるので、少しはみ出してしまう。見た目の問題以外に、ジャケットの内ポケットから取り出すとき、はみ出た部分が引っかかって取り出しにくいということもあった。

ちょうど、軸の塗装が摩擦により剥げてきていたのもあって、これらの問題を解決できるペンシルがあれば、買い替えたいと思っていた。漠然とそう思っていただけで、特に欲しいペンがあったわけではない。

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カランダッシュのエクリドールについて調べたのは、それからである。過去にボールペンが気になって買おうか考えたことはあったが、どうしても油性インクが苦手で結局見送ってきた経緯がある。

エクリドールはスイスの高級筆記具メーカー・カランダッシュの定番モデルで、万年筆、ボールペン、ローラーボール、ペンシルの4種類がある。エクリドールの歴史について、カランダッシュの公式サイトには「1953年にボールペンが加わり誕生したコレクション」*1とあるが、伊東屋は「1947年に誕生して以来、その美しくシャープなフォルムを守り続けてきた、エクリドール コレクション」*2と紹介していて、『THE PEN CATALOGUE 2021』にも「1947年に誕生して以来…」とある*3Wikipediaは「1929年、自動給芯機構を持つ世界最初の完全金属製メカニカルペンシル『フィックスペンシル』(現在のチャック給芯式シャープペンシルの原型)を開発、特許を取得し、カランダッシュ社のデザイン上の特徴である六角形デザインの『エクリドール』 として発売」*4とある。だいたいこういうのは本元が一番古い年号を言ってくるのが常だが、エクリドールに関しては本元であるカランダッシュが一番新しい年号を言うという珍しい状況になっている。

事前の下調べでは、エクリドールXS(ミニサイズ)のペンシルを第一候補に考えていた。手帳がミニ6サイズであるため、携行するペンもミニサイズのほうがいいだろうと思ってのことだ。また、ノーマルのエクリドールで使う芯の太さが例外を除き0.7mmなのに対して、XSは0.5mmである。手帳に細かい書き込みをする上で、芯は細いほど字が潰れにくく好ましい。実際、モノグラフでは0.3mmを使っていた。コンシェルジュには、「XSシャープが気になっています」とメッセージを送った上で、店にお邪魔した。欲しい柄も、実はおよそ目星は付いていた。「シェブロン」である。

ちょうど店ではカランダッシュのフェアが始まっており、ショーケースに数本のエクリドールが並んでいた。その中で、手前から2番目の一本に目が釘付けになった。今まで見た中で一番きれいだった。


とりあえず、試し書きをさせてもらう。「ではどうぞ」と椅子にかけるよう促され、エクリドールのボールペンとペンシルが何本か出てきた。中にはコンシェルジュの私物もあった。試し書きに椅子に座らせてくれるのはさすがである。これをやっている店はそれほど多くない。百貨店の高級ペン売場でも、立ったまま書かされるところがある。

ボールペンは、思ったより書きやすかった。カランダッシュが誇るボールペンリフィル「ゴリアット」は旧約聖書に出てくるペリシテ人の巨人兵士ゴリアテの名に因む。インクの通り道となる溝の本数が多く、掠れにくいとかサラサラ書けるとか言われている。たしかに油性にしては書きやすいと感じた。さらに書きやすかったのは、ジェットストリームのリフィルを入れたコンシェルジュ私物の1本である。油性は嫌いなはずだったが、「これ書きやすいですね」と言ったら、「実はそれにはジェットストリームのリフィルを入れています」という話だった。ジェットストリームで書きやすいと感じたのは初めてだ。とはいえ、いくら書きやすかったと言ってもやはり油性は油性、オートのC-305リフィルを入れた自分のカスタム74ローラーボールには敵わない。せっかくだが、やはりボールペンは見送った。あくまで目当てはペンシルである。

ペンシルで意外だったのは、0.7mm芯の汎用性である。紙に対して芯が面ではなく点で当たるように、ちゃんと回しながら書けば、かなり細い字を書き続けられるということだった。もちろん0.3mmに比べると太いのは確かだが、試しに手帳に0.7mmで書いてみたところ、まあなんとか使えるというレベルではあった。試し書きをしなければ、0.7mmを候補に入れることはなかっただろう。

XSの在庫がなかったので、ノーマルのサイズをPLOTTERに挿してみたところ、アシュフォードのナイロンのペンホルダーにぴったり入った。長さもちょうどいい。ノーマルでは長すぎると思っていたが、実はかなりコンパクトだ。わざわざXSを選ぶ必要はない。ノーマルでいけるとなれば、残るは軸の模様をどれにするかだ。

そう言いながら、すでに心は「ローテーション」に決まっていた。いま試し書きをしたのはローテーションのボールペンなので、このペンシルがあれば……と思ったのだが、ペンシルはたまたま店に在庫がないだけでなく、そもそもラインナップにないということがわかった。かつてはあったようだが、とうに廃盤になったらしい。

他の柄で妥協するか一瞬考えたが、もはやローテーションを諦めることはできなかった。どうしてもローテーションが欲しい。手元で見較べるほど、ローテーションが魅力的に思えた。ローテーション以外を買っても後悔が残ることは明らかだったので、申し訳なく思いながらその場でのエクリドールの購入は諦めて、関係のない小物を買った。

エクリドールは軸の模様がいろいろあって、2021年4月現在、カランダッシュの公式サイトで確認できるだけでもこれだけのバリエーションがある。

シェブロン
ヒプノーズ
レトロ
アベニュー
バンブー
ミラネーゼ
リーニェ
ビクトリアン
フラワーズ
ヘリテージ
マッチポイント
バリエーション
ゴルフ
キューブリック
アーバン
レーシング

この中にはシェブロンやレトロのような定番の柄もあるし、限定の柄もある。それ以外にも、自分が調べたかぎりではこんな軸も見つけた。

ベネシアン
マヤ
スイスフラッグ
アンモナイト
ダミエ
アルルカン
タイプ55
矢がすり
バンブー
オリーブ&鳩
ルミエール
とんぼ

インフィニット
ヒュッゲ
ヨットクラブ

ディスコンになったモデルでも、手に入る可能性はある。ただし、売れ残りの在庫を抱える店舗を見つけられればだ。古いモデルや人気のモデル、生産数が少ないモデルになるほど、入手が困難になる。ローテーションのペンシルは、いつまで販売されていたかの情報がまだ調べきれていない。ボールペンは「THE PEN CATALOGUE 2014」には掲載されていた*5が、ペンシルはこの時点ですでにないようだ。そしてボールペンも2015年にカタログ落ちとなったらしい*6。だとすると、ボールペンは終売から今年で6年、ペンシルはそれ以上になる。見つけてやるという意志はあったが、見つかるという保証はなかった。蔦屋書店もたまたまデッドストックでローテーションのボールペンがあったから販売していただけで、これが売れれば新たな入荷はない。 

 

2. デッドストック捜索

自宅に戻ってから、ローテーションのペンシルを検索しまくる日が始まった。思ったより見つからないのは、半分予想した通りで、半分意外だった。本気になって探せばあっさりと見つかるのではないかとの希望的観測と言うべきか、軽く見ていたフシがある。意外と見つからないので焦った。

そうして数日経ったある日、国内のとある店のオンラインストアでついに見つけてしまった。在庫状況が「取り寄せ」にはなっているが、注文ボタンは押せるようになっているため、念のため問い合わせる。翌日、「海外仕入先に在庫なく取り寄せ不可」との回答があった。見つけたと思ったのだが、簡単にはいかなかった。その後、その店のオンラインストアをもう一度見に行くと、当該商品は「売り切れ」に訂正されていた。さらに数日後、当該ページは削除されていた。かくして振り出しに戻った。

大手文具店のオンラインストアや大手通販サイトは当然のようにないので、地方の文具店のサイトも探して回った。ヤフオクも見た。メルカリも見た。グーグルで検索ワードをちょっとずつ変えながら検索結果を隈なくチェックしていった。それでも見つからない。

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秘策は、アマゾンの海外版だった。国ごとに売っている商品が違うので、日本のアマゾンで見つからなくても、他の国のアマゾンでは見つかる可能性がある。どの国でも日本に出荷できるかはわからないが、とりあえず20ヶ国分のアマゾンを全てチェックした。それも成果がなかった。

一人で探すのに限界を感じ始めたので、文具業界で働く知人に相談した。雑誌に載るほどの有名人である。彼の豊かな知識と人脈を使って探してもらったが、見つからなかった。ひょっとすると彼は見つけるかもしれないと期待していたので、かなりショックを受けたのは事実だ。それでも八方手を尽くしてくれ、非常にありがたかった。次に会った時、相応のお礼はするつもりである。

彼にすら見つけられない物を、どうして自分が見つけられるだろうか? そんな気持ちはあったが、もう少し探してみようと思った。ネットの情報は、8割以上が英語で書かれていると言われる。すでにeBayや海外アマゾンは見たが、もっと大きな英語情報の海に潜って、探してみる必要があった。もはや検索スキルの問題ではなく、気力の問題だった。

そして1週間くらいした頃に、東南アジア某国首都に、注文可能な店を発見した。値段は割引を入れると国内定価より安かった。送料と輸入消費税を加えるとそれより高くなるが、自分には希少価値からするとむしろ安い。海外の店からオンラインで筆記具を買うのは初めてなので、いささか不安はあったが、調べてみると歴史ある店のようだった。グーグルマップの口コミを見ても店側の対応は真摯である。ただ、すでに一度別の店で「在庫なし」回答を食らっているだけに、物があるかどうかはまだ信じ切れなかった。海外の店だけに、お金を送ったきり、物が届かないとか、別物が届くといった不安もあった。

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店に問い合わせると、夜遅くでもすぐに返事が来た。「確認の上折り返す」とのことで、期待半分、諦め半分で待っていると、週明けになんと「在庫あり」との回答があった。日本への発送も可という。今年、一番テンションが上がった瞬間に間違いなかった。


3. 輸入

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代金はペイパル経由で支払った。日本円で約2万7000円だった。その後、店から代金受領のメールが来たことでだいぶ安心した。手元に物が届くまでが待ち遠しく、日に何度も追跡をかけた。輸送はスムーズに進んでいたが、日本の税関で止められた。心配していると、DHLから電話で「金属メッキされた品物ですか?」という問い合わせが来た。ローテーションはパラジウムコーティングが施されている。なぜかと問えば、メッキの有無で輸入関税がかかるかが変わるとのことだった。コーティングのあるおかげで輸入関税は無税となり、輸入消費税と代行手数料・計3200円のみの支払いで済んだ。パラジウムは汚れや傷だけでなく、税金からもペンを守ってくれた。ありがとうパラジウム

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支払いから9日後、DHLにより荷物が到着した。箱のスリーブに貼ってあるシールに「ECRIDOR FOUNT. PEN TYPE 55」と書いてあるので、別物が送られてきたのかと思って一瞬焦ったが、中身はローテーションのペンシルだった。シールは経年劣化で少し黄ばんでいるが、箱に傷はなく、本当にデッドストックだったのだという印象を受ける。カランダッシュの保証書も付属していた。

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これがローテーションのペンシルである。四角が螺旋状に並ぶこの模様は、マクロ的に見ても、ミクロ的に見ても美しい。

新商品「カランダッシュ ローテーション」シリーズは、エクリドール コレクション「タイプ55」シリーズの大ヒットを受け、「タイプ55」シリーズの特徴でもあるボディに施された深彫り彫刻技術を採用。深彫り彫刻で可能となった掌にフィットするグリップ性はもちろんのこと、光の反射により美しく輝くボディの柄は、高級感が一層漂います。 エクリドール ローテーションはモダニズム建築のデザインをアイデアとして、その柄が誕生しました。ボディに流れるように施された美しくかつ力強い彫刻は、モダニズム建築の特徴でもある立方体によって形成される幾何学模様をモチーフとしており、さらに遠近法(透視図法)を使うことにより、まるでボールペンのボディがねじれているように見せています。今までにない斬新なデザインのエクリドール ローテーションは、その安定した書き心地とともに、見た目にも楽しんで頂けます。*7

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ローテーションの軸の両端を持って回し続けると、散髪屋の軒先にあるあの赤白青の回転体のように、螺旋運動が永続しているように見える。自分にはそれがデザインの「普遍性」と合致して、一本の芸術に仕上がっている観がある。見れば見るほど、きれいだ。冒頭の絵のタイトルは、これを眺めているうちに思い浮かんできた。

なんとか手に入れたことを、一緒に探してくれた知人にまず報告した。自分のことのように喜んでくれた。


4. 使ってみた感想

総じて気に入っている。減点要素は特にない。結果として、万年筆の使用頻度は少し減ってしまった。無論、エクリドールを手に取る回数が多いためである。

エクリドールはシルバーなので、大きさの割には25gとやや重たい。樹脂製のカスタム74万年筆は23gだが、掌の上では2g以上の差を感じる。金属軸のペンを今まで使ったことがなかった。重たい軸を支えるのに、握る手に少し力が入るので、長時間書き続けると疲れるかもしれない。

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重量バランスは悪くない。どちらかというとリアヘビーだが、ファーバーカステルの「パーフェクトペンシル」のように無茶苦茶なものではない。

ノックは多少重い。音は普通にカチカチという音がする。

エクリドールの構成パーツの少なさは見事だと思う。キャップと消しゴム以外は一体ものになっており、軸の途中に継ぎ目はない。最近発売されたコクヨの「鉛筆シャープ」もこれに近い。もっとも、鉛筆シャープは消しゴムもキャップもないため、分解できるパーツがない究極の一体ものになっている。

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天冠は旧タイプのロゴのようだ。天冠のデザインやクリップの形状が時期によって異なるとの情報を、以下のブログで知った。非常に詳しく、参考になった。いくつかのブログを見るに、現行の天冠(鉛筆そっくりの見た目)は賛否両論で、旧デザインを支持する人も少なからずいるようだ。
機能面でいうと、モノグラフからの乗り換えに際し、気になるか心配していたのは、次の2点だった。

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まず、消しゴムの性能がまともかということだ。これについては、思ったよりちゃんと消える消しゴムだったので安心した。ただ、百貨店に予備の消しゴムを買いに行ったら、1個385円もした。売場で「互換性のある他メーカー品はあるか」と尋ねたら、真面目な店員に「わからない」と言われた。とりあえず純正品1個は予備として確保したが、毎回これを買っていたら、ランニングコストが高くつきそうだ。いま調べたら、パイロットの「シャープゴムS」型番:HERFS-10が最大径4.2mm・全長12.5mmとのことで、手元の純正品を測ってもだいたいそんな感じだ。パイロットのは5個入って110円だから、ずっと経済的である。

もっとも、いちいちキャップを取ってこの消しゴムを使うのはけっこう手間に感じる。モノグラフはキャップを外さなくても消しゴムが出てくるので、すぐに消せた。しかも消しゴムが大きいので、遠慮なくゴシゴシ消せた。それに対して、エクリドールの消しゴムはペンシルによくある小さな消しゴムで、ないよりはマシだが、これだけで済ますのは心許ない。

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そこで「消しゴムを別で持つ」という一周回った考えに至った。これを実現するには、ジッパーケースに入れても嵩張らない、小型か薄型の消しゴムが必要になる。そこで探してきたのが、ぺんてるの「Ain SALA」である。4.5mmの超薄型消しゴムで、これなら手帳のジッパーケースに入れてもほとんど厚みが出ない。トンボ鉛筆の「モノスマート」の5.5mmに対し、1mm薄いAinを購入した。METAPHYSの「gum」という消しゴムは3mmとさらに薄い。しかし、公式オンラインストアは品切れになっていた。楽天やヤフーショッピングでは売っているようだが、現時点では様子を見ている。機会があれば試してみたいとは思う。その他、薄型の消しゴムではノック式もある。ノック式はリフィルが薄くても本体が大きいので話にならない。そのため選択肢に入らなかった。

そういうわけで、書き間違えたらAinをジッパーケースから出してきて消すというやり方で、今のところ、この試みは成功している。Ainの字消し性能は申し分ない。強いて不満を挙げると、字を消すときにしっかり掴んでいないと、スリーブが下にずれてきてしまうことくらいだ。


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そしてもう1つの心配は、やはり芯の太さが0.3mmから0.7mmになったことだった。これに関しては、蔦屋書店での試し書きで確認した通り、「たしかに太いがなんとか使える」という認識で変わらなかった。PLOTTERの運用は、蛇腹式の月間カレンダーと、週刊レフト式のカレンダーを使用している。どちらも書き込みスペースは小さいが、0.7mmでも問題なく使えている。

蛇腹式のカレンダーは試しに使ってみているのだが、半年経って、来年はPLOTTER純正の月間カレンダーに戻そうと思い始めている。蛇腹のカレンダーのメリットは、前後3ヶ月分(さらに広げれば最大6ヶ月分)が一覧できることと、月を跨ぐ週が改行されることなく一列になっていることである。これらのメリットを最大限享受できたという自覚がまだない。むしろ、月間を使うために手帳をいちいち横向きにしないといけないのを面倒に感じだした。

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芯は三菱鉛筆「ユニ ナノダイヤ芯」を購入。H・HB・B・2BからHBを選んだ。もともとはBや2Bのほうが好きなのだが、摩擦によって裏写り的に他のページを汚してしまうことがあるので、H寄りにした。5月には、ナノダイヤ芯ではない「ユニ」のラインナップが拡充され、0.7mmもHB・B・2Bの3種類が登場する。「くっきり濃いのに汚れにくい」がキャッチコピーで、ナノダイヤ芯を買ったばかりだが、こちらも気になっている。

改めて書き比べてみると、大きめの字を書くときは0.3mmも0.7mmもほとんど差はない。小さい字を書くときに、0.7mmではやや苦しくなる。


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PLOTTERにジャストサイズで収まる。

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アシュフォードのペンホルダーにも合う。これ以上キツイとおそらく出し入れがしにくくなるし、逆にこれ以上緩いとぐらついて安定しなくなるおそれがある。

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この角度から見た軸の模様も美しい。

自分は筆記具については収集するタイプではないので、たぶんエクリドールはこれで満足してしまう。あくまで想像の話として、もしローテーションの他にもう1本買うとしたら、どれを選ぶか? 難しい質問だ。候補としては、異様な存在感を放つ手彫りの「ベネシアン」、ローテーションの先輩である「タイプ55」、定番の「シェブロン」あたりだろうか。

すでに万年筆とボールペンはカスタム74で落ち着いており、今回はペンシルという新しい需要を開拓した形だ。これで万年筆・ボールペン・ペンシルは一通り厳選し終えたことになる。あとは「赤ペンが欲しい」とかにならない限り、新しいペンを増やすことはなさそうだ。あるいは3本のうちどれかを紛失してしまったりすれば、違うものを買うことも考えるかもしれない。

ともあれ、まずは苦労して見つけたローテーションのペンシルを後生大事にしたい。うっかり失くすと、本当に二度と見つける自信がない。