黒猫陛下の書斎

「試筆」とは、試し書きのことではない。

キーボードの最高峰・HHKBを買った

◆HHKBを買った

久々に我慢ができず買ってしまった。ハッピー・ハッキング・キーボード、略してHHKBである。

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買って7〜8年になるMacBookのキーボードが一部動作不良に陥ったのをきっかけに、クラムシェルモードで使うようになった。クラムシェルモードとはその名の通り、MacBookを貝殻のように閉じたまま、外付けのディスプレイとキーボードに接続し、デスクトップPCのように使う方法のことをいう。モニターはアイ・オー・データの24インチディスプレイを購入し、Bluetoothキーボードは従来からiPhoneiPad用に持ち歩いて使っていたロジクールのK380を自宅でも使うことにした。もちろんマウスも使っている。初めはディスプレイのサイズが大きくなっただけで非常に快適に感じたのだが、徐々にキーボードがK380では物足りなく感じるようになった。 

K380は決して悪いキーボードではない。むしろこれほど、いい意味で機能と価格のバランスが取れていないキーボードも珍しい。WindowsMaciOSAndroidのすべてに対応し、ボタン一つで接続先の切り替えができる機能だけでなく、持ち運びに優れた小ささ・薄さ・軽さ、安定の乾電池駆動、さらに見た目とは裏腹の打ちやすさなども備えていて価格が3000円台なのだから、文句の付けようがない。

にもかかわらずHHKBを買ったのはなぜか。市場ではマニア向け製品との評価が一般的だ。何しろ、キーの配列が独特な上に、価格が3万円超とキーボードにしては異常に高い。安物であれば500円でも手に入り、1万円を超えればそこそこ本格的なキーボードといわれるこの時代に、3万円以上も出して変な配列のキーボードを買う人間がそこら中にいるはずもないし、いてはいけない。

◆HHKBとの出会い

HHKBの名前を初めて聞いたのはいつだったか覚えていないが、少なくとも2〜3年前には認知していた。これまであまり食指が動かなかったのは、やはり配列が独特だからだ。F1からF12までのファンクションキーが独立して存在せず、数字キーと一体になっていたり、US配列では矢印キーさえない有様である。キーを減らせばそれだけ手の動きが最小限で済むのはわかるが、今まで普通のJIS配列で慣れてきた自分には扱いにくいのではないかとの懸念はやはり拭えなかった。一方、K380は普通のJIS配列なので、違和感なく受け入れられた。今さら変な配列のキーボードを買って苦労するのであれば、K380を使い続けたほうがいいのではないか。

しかし、コスパを抜きにすると、K380の打ちやすさは理想的とは言えなかった。キーストロークの浅い、ややかためのキーなので、さすがに1時間くらい打ち続けると指の関節や前腕の筋肉が疲れてくる。自分はこうしてブログを書いたりするほか、日記もPCでつけているし、新聞を読んだときにPCでメモを取る習慣があるので、一日のタイピング量はそこそこの量になる。長時間のタイピングにも耐えるよう、もっとキーストロークの深い、そして感触の軽いキーボードが欲しいと思うに至った。プログラマーなど職業的に一日何時間もキーボードを打つ人たちは、2〜3万円もする高級キーボードを好んで使うという。そんなに違うものなのかと、好奇心はあった。そうした高級キーボードとして初めて認知したのは、東プレ株式会社の「リアルフォース」シリーズである。「静電容量無接点方式」という、妙に格好いい専門用語もそのときに覚えたが、その時点で仕組みまでは理解できなかった。とにかく、普通のキーボードと違うことだけは感じ取った。

HHKBは、静電容量無接点方式のキーボードである。キーボードには、どのキーが押されたかをキーボード側で認識するための方式(機構)が複数あり、かつてHHKBには価格帯によって異なる2種類の方式があったのだが、現在販売中のHHKBはすべて静電容量無接点方式である。同方式は、世の中のごく一部のキーボードにしか採用されていない少数派で、中毒性のある軽妙な感触と高い耐久性が特徴である。その代わり値段が最も高い。どんな仕組みなのかは、次の動画を見てもらうのが一番わかりやすい。

静電容量無接点方式のキーボードが人を魅了するのは、ミスタイプが少なくなるとか、打っていて疲れないのももちろんだが、それと同じくらい、打つこと自体に快楽を覚えるという理由もある。ほとんどの場合、他の方式のキーボードより軽い力でキーを押せる。キーを押すのに必要な最低限の力を「押下圧(g)」といい、数字が大きいほど強い力が必要になる。安価なキーボードの多くは押下圧50〜60gとされるのに対し、HHKBは45gと軽い。リアルフォースは30gのものまである。自分は軽めのほうが好みだが、キーのコシが弱いとミスタイプが増える傾向にある。なので、軽いほどよいというわけではない。押下圧は低めだが、同時に反発力のあるキーを最も理想的と考えている。

静電容量無接点方式だからこそ、キーを撫でるような入力が可能になる。多くは無意識に力が入りがちだが、リラックスして、肩も手首も指も、できるだけ力を抜く。この状態で普通のキーボードを打とうとすると、キーがほとんど沈まず、打てない。その理由は上の動画で説明のある通り、当たり判定がキーの沈み込んだ奥にあるからだ。けれどもHHKBは違う。HHKBはキーの沈みが浅くても、電気的な容量の変化を感知して、入力されたとみなす。だから軽い力で撫でるように入力できる。この入力に慣れてしまうと、あまりに快適すぎて、普通のキーボードには到底戻れなくなる。

HHKBのキーを打ったときの音は、YouTubeやブログでのレビューではよく「スコスコ」と表現されたりするが、実際には「ポコポコ」だったり「コトコト」だったり「シュクシュク」だったりすることもある。同じ静電容量無接点方式のキーボードの中でも、製品によって音の大きさや高低は異なり、ものすごいバリエーションになる。HHKB以外の製品含め、静電容量無接点方式のキーの音が聞ける動画をいくつかピックアップしてみた。

静電容量無接点方式は、感触にも音にも中毒性があり、まず「それを味わいたい」という欲望の発露を起点として、そこから何らかの作業をし始めるという逆転現象を生む。その点が万年筆とよく似ていることに気がつくだろうか。万年筆で何かを書くという作業が楽しく、それ自体が目的になるのと同じだ。「手段の目的化」を生じさせるのは、一般的に「いい道具」の証とみていい。

あるとき、ヨドバシカメラで展示品に出会い、「これがリアルフォースか」と思って試し打ちをしたことがある。独特の感触はたしかにクセになるものだった。ただ、2万〜3万円台という価格が当時の自分には高すぎた。そして何より、リアルフォースに持ち歩きのできる製品がなかったので、K380を買い替えることにはならなかった。

潮目が変わったのは、雑誌で久しぶりにHHKBを見た時である。そこにあったのは、最上級モデルProfessional HYBRID Type-Sの写真だった。相変わらず独特の配列は使いにくそうに見えたが、時間を置いたことで少し冷静になっていた。あるいは金銭感覚が鈍っていたのかもしれない。記事に目を通すうち「独特の配列にはすぐ慣れる」「慣れるとむしろこれ以外使えない」といった、薬物の勧誘みたいな感想に憧憬を抱いて自己投影を行う自分がいた。リアルフォースと同じ静電容量無接点方式のキーボードということは、打ち心地に間違いはなさそうだ。リアルフォースは持ち運びができなかったが、HHKBは最初から持ち歩きを意識したサイズだ。無線接続対応なので、iPhoneiPad用のキーボードとして使える。独特の配列に慣れさえすれば、これはけっこうアリなのではないか? そう思うようになった。

◆ラインナップ

HHKBのラインナップは次の通りである。

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今回購入したのは「HHKB Professional HYBRID」である。最初は、最上位機種の「HYBRID Professional Type-S」しか頭になかったのだが、やはり購入前の試し打ちは必須。実機のある店舗に足を運んだ。すると予想外にもType-S(静音)ではない普通のHYBRID(以降「非静音HYBRID」と呼ぶ)のほうが打ちやすいことに気がついた。ただ、劇的に違ったわけではない。微妙な差なので、自分を納得させるのに1時間を要した。当時小ぢんまりとした店内に自分を含めて2〜3人の客しかおらず、店の片隅で1時間も品定めしている客を、店員は随分怪しんだに違いない。しかし、一度も声をかけず、そっとしておいてくれた店員には感謝している。おかげで、満足いくまで何度も試し打ちすることができた。帰り際に聞いた話では、HHKBは量販店に置かないという戦略を取っているという。たしかにヨドバシカメラでは、リアルフォースは置いていたが、HHKBは置いていなかった。メーカー公式サイトで確認しても、HHKB実機が触れる店は日本に数ヶ所しかない。高額なだけに、実物を見ずに買うのはなかなか勇気がいる。

結局、最上位機種を買っておけば間違いないという先入観とは裏腹に、何回やっても非静音HYBRIDのほうが打ちやすいという結論に至った。ここまでくると、確信を持って非静音HYBRIDを選べるようになった。

Type-Sと非静音HYBRIDでは、まずキーストローク(沈み込む深さ)が違う。非静音HYBRIDがキーストローク4.0mmであるのに対し、Type-Sは3.8mmである。つまり、Type-Sのほうが0.2mm浅い。もう一つ、メーカー公式サイトを見ているとType-Sのほうにだけだけ「高速タイピング性(Speed)と静粛性(Silent)に優れたキー構造を採用しています」と書いてある。キーストロークを浅くしただけで音が静かになるわけではないと思うので、おそらくそれ以外にも何かが違うのだろう。しかし、具体的にどう違うのかは書かれていない。

非静音HYBRIDよりも約5000円高いType-Sの「S」は、SpeedとSilentを意味するという。Silentについてはわかる。たしかに音が比較的小さくなっているからだ。問題はSpeedで、メーカーが何を根拠に速さを謳うのか、そこは根拠に乏しい。堂々と「SpeedのSです」と言われると、まるでそれが一番速く打てるキーボードであるかのように思ってしまう。

キーの感触の違いは、たしかにある。試し打ちで入念に確かめたのは、もちろんそこだ。非静音HYBRIDは、キーの反発(押した時に戻る力)がType-Sよりわずかに強い気がする。それが自分にとっては打ちやすいと感じた。もちろん逆の人もいるだろう。しかし自分の場合、何度も試し打ちしているうちに、Type-Sに比べて非静音HYBRIDはミスタイプが少ないことがわかってきた。もし感触が完全に一緒で、単に音だけの違いであれば、静音のType-Sを選んだ蓋然性が高い。

そもそもHYBRIDは有線・無線接続両対応のモデルで、それ以前のHHKBは有線接続しかできなかった。持ち歩きを考えている自分としては、有線接続はできてもできなくてもどっちでもいいが、無線接続は必須だ。その時点で自分が買うべきモデルは少なくとも無線接続ができるモデル、すなわちHYBRIDのType-Sまたは非静音モデルのどちらかに絞られた。もっとも、現在のラインナップで無線接続に対応しているのは、有線・無線両対応のHYBRIDシリーズしかない。ちなみに販売中の全モデルに冠されているProfessionalとは静電容量無接点方式のこととみられ、廃盤品を含めた全HHKBの中でProfessionalではないモデルが唯一のメンブレン方式になっている。今販売されているものは全てProfessionalなので、そこは気にする必要がないし、気にしたところで選択の余地はない。

◆購入品

というわけで、今回購入したのはHYBRIDの非静音モデルである。色は黒(墨)、配列は日本語を選んだ。刻印は、日本語配列の場合は、必ずありになる。無刻印モデルが欲しい場合は、必ず英語配列にしなければならない。色は、正直かなり迷った。白はいかにもキーボードという感じがあって、ダサいが同時に愛嬌もある。最後まで後ろ髪を引かれつつ、結局黒にした。今使っているPCのモニター、iPadiPhoneはすべて黒いことから、色を合わせることにした。また、白は経年劣化で筐体が黄ばむようなので、それも敬遠の一因になった。配列は悩むことなく、使い慣れた日本語配列を選んだ。とはいえ、iPhoneiPadに接続すると、どのみち英語配列になってしまう。これは慣れていないと混乱する。幸い、自分はK380で慣れていたので、問題なかった。アップル純正のMagic Keyboardを使えば、iPadなどでも日本語配列で使えるが、残念ながら自分のMac(2012MidのMacBook Pro, 13インチ)はMagic Keyboardに互換性がなかった。もし、Magic Keyboardが自分のMacBookで使えていたら、Magic Keyboardを買っていた。その意味では、たまたま互換性のない古いMacBookを使っていたからこそ、HHKBに出会えたとも言える。逆にもし、Magic Keyboardを買っていたら、静電容量無接点方式のキーボードに出会うのは、少なくとも数年先になっていただろう。

◆HHKBの配列

さて、価格以外でHHKBが敬遠される最大の理由は、何度も述べている通り、特殊なキー配列である。最も劇的なのはF1〜F12キーの撤廃である。とりわけF7とF10は、MacでもWindowsでも、それぞれカナと半角英数に変換する際に用いるので、極めて重要だ。Windowsに限定すれば、ExcelでF2(セルの編集モード切り替え)やF4(直前の動作の反復)をよく使う。HHKBではそれらのキーを全て撤廃している。それ以外にも、Aの左がCapsLockではなくControlだったり、Zの下に謎の「HH」というキーがあったり、普通はあまり使わないFnが左下の角にいたりする(そしてこのFnキーは、HHKBで逆に最も重要なキーの一つである)。

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一般的なキーボードとかなり違うので、使いにくそうに思って敬遠するのも自然なことだ。自分もこの配列に適応できるかどうかが一番の不安だった。しかし今となっては、すべて杞憂に終わっている。最も不安だったF1〜F12についても、人間のこだわりとはいい加減なもので、案外すぐ慣れるものだ。F1〜F12は独立していなくても十分使えるし、その他、独特の配列にしても、1ヶ月も経たないうちにかなり慣れてしまった。F1〜F12がなくても問題ないなど、使ってみるまで想像できなかった。

HHKBにはF1〜F12が存在しない。その代わり、Fnキーと数字キーを押すことで、同じ効果が得られるようになっている。同時押しなので指を2本使わねばならないが、これは思ったほど大変ではない。むしろホームポジションからの指の移動距離は短くなるので、押しやすいとさえ思う。この方法によってHHKBはキーを一気に12個も減らすことに成功している。1個減らすのにも相当な工夫が要るところ、12個も減らしている。キーを少なくする以上は、一つのキーに複数の機能を割り当てる必要がある。側面に印字のあるキーは、69個中39個と半数以上(約56%)に及ぶ。側面の機能は、Fnとの同時押しである。言うまでもなく、Fn以外に、Shiftや Command、Optとの組み合わせもある。1個のキーに何通りもの役割を与えている。最初はそれを覚えるのが大変かもしれない。でもすぐ慣れるだろう。機能と携行性は通常対立することが多いが、HHKBの場合はどちらを犠牲にすることもなく、同時に発達させてしまった。天才的な発明ではないかと思う。

普通のキーボードでホームポジションに指を置き、数字キーに指を伸ばす。このとき手首はまだ動かないが、F1〜F12にまで指を伸ばそうとすると、手首を多かれ少なかれ上にずらさなければならない。手首の位置が動くたびに、ホームポジションに戻ろうとする人差し指は、FとJの突起を探しに行く。その時間がもったいないし、毎回毎回、脳が微妙なストレスを受ける。HHKBは、手首が動く時間がもちろんゼロにはならないが、これまでよりは明らかに少ない。可能な限り手首の位置を動かずに入力し続けられることを理想とし、こういう配列を生み出したのではないかと思わせる配列になっている。

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配列はすでに完成されたものではあるが、やはり人それぞれ最適な配列は異なる。ここがこうだったらいいのにという希望は出てきてもおかしくない。なくなってしまったF1〜F12は戻らないが、残ったキーについては、HHKB内のソフトを書き換えることによって、キーの位置を変更できる。すなわち、キーマッピング機能がHHKBには備わっている。書き換えソフト(無料)はメーカー公式サイトで配布されており、自分はCommand(⌘)の位置だけがどうしても慣れなかったので、早速キーマッピング機能を利用し、隣り合うHHとCommandの位置を入れ替えた。もともとHHだった場所にCommandを割り当て、Commandだった位置にHHを割り当てたのである。CommandはWindowsでいうCtrlにあたり、コピペなど主要な操作で多用される。特に意識しなくてもさっと指が動く位置にあるほうが望ましい。CommandとHHを入れ替えることで、小指がほぼ毎回正確な位置に移動するようになった。ただ、Commandを割り当てた位置にはHHと書かれたキーがあり、このままでは見た目と機能が一致せず気持ち悪い。そのため、キープラーと呼ばれる専用の器具を買ってきて、2つのキーを物理的に入れ替えた。キープラーは他メーカー品をヨドバシカメラで購入したが、普通に使えた。値段は500円くらいだった。

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◆EDC化

HHKBは、EDC(Everyday Carry:毎日持ち歩くアイテム)の一つになった……と言いたいところだが、実はそうでもない。持ち出すときと持ち出さないときがある。最大の理由は「自分がメインで持ち歩いている手提げ鞄には入らない」ことである。K380はなんとか入るのだが、HHKBはそれよりも横幅があるので、入らない。厚みもかなりある。がっつり作業したいときは手提げではなくリュックにして、HHKBを含むすべての作業道具を入れていく。

HHKBを持ち出すときは専用のケースに収納する。純正品なので、さすがにサイズはぴったりである。マジックテープで止めるようになっており、取り出すときにバリバリと音が立ってしまうのはちょっとマイナスポイントと言わざるを得ない。手触りはふかふかして良好である。ケースに収納する前に、アクリル製キーボードカバーを被せる。これも純正品で、HHKBのロゴが入っている。ちょっと過保護のようにも思えるが、これを被せておけば埃が入らないし、鞄の中でキーを保護できる。キーを埃から守ってくれるのももちろんだが、アクリルカバーを被せることで、キーの誤動作が防げるので、電源を入れたまま持ち歩けるようになるのが意外なメリットの一つだ。このカバーも驚くほど値段が高いが、買ってよかった。純正ケースは当然このカバーを付けたままぴったりと収まるようになっている。

せっかくなので他のEDCも紹介しておく。

1. 財布
コムデギャルソンの二つ折り財布をもう何年も使っている。壊れたら買い替えようと思っているが、なかなか壊れない。見た目も好きだし、収納も十分。ラウンドジップの噛みがよく、非常に滑らかに動くところも地味に気に入っている。

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2. 手帳
3月から使い始めたミニ6サイズのPLOTTER。まだ1年未満だがプエブロのバインダーレザーはかなりいい感じに育ってきている。リフィルの使い方もある程度定まってきた。途中から、やはりウィークリーはあったほうがいいと思い、ウィークリーのリフィルも入っている。マンスリーは、来年から「じゃばらんだー」という蛇腹式のカレンダーを試しに使ってみることにした。使ってみてダメなら、純正のリフィルに戻す。「じゃばらんだー」は蛇腹を広げると、6ヶ月分のカレンダーが一続きになってあらわれる。月を跨ぐときに改行されないところが気に入って購入した。やや不安に思うのは、マンスリーを見るときだけ手帳の向きを90度時計回りに回さなければいけないことと、見たい月を開くのに少し時間がかかりそうなことだ。

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3. ペンケース
ナガサワの3本挿しに万年筆(カスタム74)、ローラーボール(カスタム74)、蛍光ペンを挿している。この組み合わせは長い間変わっていない。蛍光ペンは仕事で資料のハイライトをする以外に、手帳で日付を塗りつぶすのに毎日使う。万年筆のインクは最近、色彩雫の紺碧をやめて、代わりにペリカンのブルーブラックを入れた。古典インクの耐水性はやはり頼もしく、古典インクに替えてから明らかに出番が増えている。コンバーターが改良型のCON-70Nになって棚吊りしにくくなったからか、インクの出もいい。ローラーボールはオートのセラミックボール0.5mmリフィルを入れている。紙によっては滲むが、この滑らかさは他にはない。

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4. iPad
9.7インチPro。購入から3年半経ち、バッテリーの劣化が気になりだした。バッテリー容量が80%を切ればアップルストアでバッテリー交換を申し込めるようになるが、まだギリギリ80%を超えているため、サードパーティーの修理店に持ち込むか、しばらくこのまま使うかしかなく、とりあえずこのまま使っている。この際、第4世代Airへの買い替えも検討しているが、バッテリーさえ新しくすれば今のままでも十分使えるので、そっちの方向でいくかもしれない。

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5. カードケース
名刺入れ・カードケース・定期入れを兼ねるこのケースは使い勝手がよく、気に入っている。サイズ的にも絶妙で、これより小さくても大きくても使いにくい。中に仕切りがあり、種類で分けて収納できる点と、マチがあるのでガバっと開く点が優れている。 

6. メッシュポーチ
ANKERのモバイルバッテリーを買ったときに付いてきたものだが、モバイルバッテリーは普段は持ち歩いていない。代わりに、車載用スマホホルダー、シガーチャージャー、充電ケーブルなどを入れている。

7. ワイヤレスイヤホン

ERATOの「VERSE」からANKERの「Soundcore Liberty Air 2」に買い替えた。

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◆買った感想

HHKBを買ってからキーボードでの入力作業がさらに楽しくなったし、より長時間打っていられるようになった。しかし、同時にわかったことが一つだけある。キーボードは、作業効率を高める手段が複数あるうちの一つに過ぎない。どんなにキーの感触がよく、速く打てたとしても、変換を含めた文字入力速度となると、デバイス間で明らかな差が出る。具体的には、iPhoneiPadよりも、Macで使っているときのほうが早い。それはIMEのせいだと思う。自分は「Google日本語入力」をMacで既定のIMEにしている。Google日本語入力は最も使い慣れたIMEで、MacでもWindowsでもずっとこれを使っている。予測変換をTabで選択するインターフェースや、文字だけでなく記号や絵文字も変換できる多彩さも気に入っている。何より重要なのは、iPadiPhoneIMEより変換精度が高く、ストレスがないことだ。せっかくいいキーボードを買っても、IMEの変換精度が悪いと、パフォーマンスは十分に上がらない。iPhoneiPadでもGoogle日本語入力が使えたらいいが、現時点でまだインストールできない。もちろん、iPad+HHKBの組み合わせは、玩具としては十分に愉しい。K380で長文を打っていたときに比べると、圧倒的によくはなっている。ただ、どうしてもMacのときとの差を感じてしまうということだ。iPadがパソコンになれない理由の一つは、そこにあるといえる。

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などと少しずつこの文章を書き続けているうちに、新しいMacBookが手元に届いた。インテルと決別し、純正チップを搭載した新型Air・13インチモデルである。すでに一通り触ってみたが、噂通りの化け物マシンである。もちろん、すぐにGoogle日本語入力をインストールし、既定のIMEに設定した。Macのキーボードはあまり使わず、ほとんどの場合でその上にHHKBを置いて使っている。ちょっと不格好ではあるが、実に快適だ。

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HHKBを買ったのは、端的に言って正解だった。減価償却的に考えれば、3万円のキーボードを3年使うと1日あたり27円になる。5年使うと16円だ。長く使うほど1日あたりのコストは安くなるのだから、悩むより先に買ってしまうほうが得だ。とあるYouTuberの言葉を借りれば、「実質無料じゃん(笑)」ということになる。実はこの考え方は昔から自分も高額の買い物をするときによく使っていた。

さらに言うと、HHKBはリセールバリュー(中古品の市場価格)が高いことでも知られる。合わなかったときはメルカリなどで売るという選択肢もある。なので、買ったときの金額がまるまる損失になる確率は低い。

ただ、HHKBが万事ベストかというとそうでもない。自分はすでにHHKBを気に入りすぎているくらいだが、それでもPCでゲームをする際は、HHKBではなくK380を使っている。そのほうが操作しやすいからだ。キーストロークが深く、感触が柔らかいHHKBは、文章を入力するときに本領を発揮する。決まったキーをポチポチ押すだけなら、ストロークが浅いほうが押しやすい。

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今後、HHKBに進化を望むとすれば、乾電池スペースの出っ張りをなくすことぐらいだろうか。軽量化やサイズダウンは、できるならば望むところだが、仮に少しでも使いやすさを犠牲にすることになるのであれば、全く必要ない。現実的なところでは、キングジムの「ポメラ」がそうであったように、今後HHKBも乾電池式から充電式になることはあり得るだろう。今は充電式のバッテリーがキーボード本体より寿命が短いという理由で乾電池が採用されているようだが、バッテリー寿命が伸びれば状況は変わるかもしれない。まあ、それだけキーの耐性が高いということでもある。

HHKBは持って嬉しい、使って愉しいキーボードである。

◆最後に

録音してみた。このカチャカチャという軽くて高い音と、ゴトゴトという重くて低い音の組み合わせは、もはや音楽である。

 

お題「#買って良かった2020