パイロット万年筆用コンバーター「CON-70」はいい、とてもいい
カスタム74を使い始めて、2ヶ月とちょっとが経った。2月中旬に手に入れたばかりの新品だが、すっかり日常の道具としてこなれている。1本挿しペンケースも鞄の中で擦れて光沢が出てきた。仕事でもプライベートでもほとんど74しか使っていないので、早いときは2日に1回ぐらいインクが切れる。これだけ使い倒した経験は過去にない。よく見ると、細長い筐体にはいくつもの細かい傷がつき、ペン先は気圧で漏れたブルーブラックで汚れている。こういうのを嫌がる人もいるが、使い込んでつく傷や汚れを、俺はむしろ歓迎している。なんとなく、皮革製品を「育てる」感覚に似ていると思う。
先日、コンバーターを買い足した。今まで使っていたCON-50は内容量が公表値0.5cc、実測値0.57ccだが(*1)、今回手に入れたCON-70は公表値1.1cc、実測値0.98〜1.04ccと約2倍も多く、一度の吸入で長持ちする。突然のインク切れにも対応できるよう、いつもミニボトルに入れてインクを持ち歩いているとはいえ、出先でインクが切れるとちょっと面倒くさい。また、吸入の回数が増えるとその分だけ無駄になるインクの量も増える。吸入後に拭き取るインクの量は案外バカにならない。ペリカンのブルーブラックのように手頃なインクならまだしも、その5倍ぐらいする値段のものもあるので、吸入回数はできるだけ抑えたいところ。
CON-70はCON-50と違って、押しボタン式になっている。通常通り本体にセットした後、ペン先をインクに浸けてボタンを押す。するとコンバーター内の空気がペン先から押し出される。指を離すと今度はコンバーター内に空気が取り込まれるのだが、ペン先がインクに浸かっているので、空気の代わりにインクがどくどくと入ってくる。1回では満タンにならない。3〜4回、繰り返して満タンにする。
ずっと(といっても2ヶ月間)CON-50を使ってきた身からすると、同軸を開けて中からぶっといCON-70が出てくる衝撃というか、いかにも不釣り合いで大仰なこの感じには慣れることがない。まあしかし容量が大きいだけあって、安心感はある。カスタム823に至っては実測値1.54ccとあるからすごい。ペリカンM1000やモンブラン149でさえ公表値で1.5ccである。
このCON-70、透明軸万年筆との相性がすこぶる良いそうで、こちらのブログの写真を見ると、銀色のパーツが透明の安っぽさを打ち消していて、たしかにいいなあと思う。古典インク使いには透明軸は持ち腐れな観もあるが、夏に涼しげな青のインクを入れたり、秋に燃えるような赤のインクを入れたりする遊びを知っている人には薦めておきたい。