黒猫陛下の書斎

「試筆」とは、試し書きのことではない。

人生ではじめて衝動買いした眼鏡

眼鏡を衝動買いするなどということが、自分の身にふりかかるとは思ってもみなかった。初めての経験である。しかも安物の眼鏡ではない。オーダーして1週間かかるやつである。仕事終わりでなんとなく気分が高揚しており、梅田でぶらぶらして帰ろうと思ったことが始まりだった。何を買うでもなく、文具や服などを見て回った後、金子眼鏡に辿り着いた。気さくに話しかけてきてくれた店員さんとおしゃべりをしているうちに、俺は頭の中で支払いの計算をするふりをし、「やめろ」という理性の声を黙殺したうえで、声帯をして振動せしめ、「これにします」という意味になる空気の流れを生じさせていた。

 
たしかに前から眼鏡は欲しかった。眼鏡と言っても、伊達眼鏡のほうである。目星はついていた。レンズに薄い色の入った眼鏡を買おうと思っていたのである。以前にも書いたことがあるが、俺はある時期からサングラスが好きになった。数本持っているが、レンズはすべてG-15(レイバン得意の、緑がかった黒いレンズ)であった。屋外でかけるのは別に構わないのだが、室内でサングラスをかけているとどうしても浮く。というか目立ちすぎる。せめて相手からも俺の目が見えるような、薄い色のサングラスを1本持つべきだと考えていた。そうすればもっと使用シーンの幅が広がると。そしてその時は来た。
 
最後に買った眼鏡がレイバンの3447ということからも自明だが、丸眼鏡はかなり好きなほうである。しかし選んだのはラウンドとボストンの中間ともいえる形であった。フレームはセルロイド素材で、やや太めである。丸眼鏡も似合わないこともなかったが、滝廉太郎かな?と思うほどレトロになってしまうので、伝統的な形は崩さぬまま、モダンな印象を与えるようなフレームを選んだ。その結果がこれである。
 
 

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正直、かけた瞬間にぐうの音も出ないほど気に入ってしまい、それまでいろいろ試しにかけてみた眼鏡は全部候補からぶっ飛んだ。デザインは以前から頭の中をちらちらしていたメタルフレームの丸眼鏡とは全然違うが、これはこれで、スーツに絶妙に合う。フレームが上から下にかけて色がフェードアウトしていくグラデーションになっており、テンプルはセルロイドらしい鮮やかなマーブル模様。鼻あては付いている。写真では伝わらないが、特筆すべきはそのかけ心地。何と言って伝えるべきかわからないが、とにかく、かけた瞬間に「これだ…」と思うようなフィット感に包まれる。そして綿菓子のような軽さなのだが、これもかけてみて初めてわかるすごさである。
 
レンズに入れた色はブルー。「青は思ったよりも出ますよ」と言われてビビった俺は25%にした。薄すぎたかなと思ったが、結果、これでよかったと思う。この程度の色なら、視界は全くといっていいほど変わらない。視界は変わらないのに、印象はがらっと変わる。もっとも、眼鏡は顔とセットで見て初めてなんぼのものなので、眼鏡単体で写真をアップしてもその真価は測れないと思う。しかし素顔を出すわけにはいかないので、ある意味で俺は、はじめから語ることのできない事柄について語ろうとしているのかもしれない。
 
ともかく、高いだけあって、店員さんの会話スキルから店舗の雰囲気、待っている間に座ったソファーのふわふわ感など、「どこで買ったか」をしっかり意識させてくれる買い物だった。大事にすれば、この眼鏡も一生モノだ。「一生モノ」はこのブログの最近の一大テーマである。お金はいっこうに貯まらないが、欲しいモノは着実に手に入っている。
 
ちなみにブリッジ部分はペン置きとしても使える。

 

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