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黒猫陛下の書斎

「試筆」とは、試し書きのことではない。

男臭いアイテム、白金懐炉(ハクキンカイロ)が面白い

11月の電気代は800円台だったが、12月は暖房をつけているせいで、その何倍かになると思われる。今年の冬は厳しい。

 

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先日、新しい暖房器具を買った。「ハクキンカイロ」とも呼ばれる、オイルを入れて使う懐炉(カイロ)である。こんにち、懐炉といえば鉄粉が入った白い使い捨てタイプが一般的だが、金属製の懐炉のほうが、実は長い歴史を持っている。昔、兵隊さんがロシアに行くときに持っていったと聞いた。

 

ハクキンカイロ」はハクキンカイロ株式会社が発売する白金触媒式懐炉の商品名であって、一般名詞ではない。ただ宅配便が「宅急便」と呼ばれたり、ティッシュペーパーが「クリネックス」と呼ばれたりするのと同様、知名度の高いモノやサービスの名前が、一般名詞として普及することは珍しくない。

 

俺が白金懐炉を知ったのはつい最近、アマゾンで使い捨てタイプの懐炉を買おうとしたときのこと。見たことのない懐炉が検索結果に出ていたので、調べてみたところ、いかにも俺が好きそうな「面倒くさい道具」であった。使い捨てタイプに比べて、どういうメリットがあるかというと、


・消耗部品の交換、オイル補給を伴って半永久的に使える
・ゴミが出ない
・発熱量が大きい
・長時間発熱する


などが挙げられる。

 

1つずつ見ていくと、まず半永久的に使えるという点だが、白金懐炉はオイルがプラチナと反応して炭酸ガスと水(蒸気)とに分かれる際に発生する熱で温かくなる仕組みになっている。使い捨て懐炉は鉄が酸化したら元に戻らないが、白金懐炉はオイルがなくなるだけなので、補給すれば何回も使える。

 

初めにプラチナ触媒を炙るのは、オイルに火をつける(=オイル自体を燃やす)ためではなく、オイルとプラチナの反応が始まる状況(=高温)を作り出すため。カバーから出した瞬間に酸素との反応が始まる使い捨てタイプと違って、白金懐炉はライターかマッチで触媒を炙らないと、ただの金属の繭でしかない。その辺が面倒くさいといえばそうかもしれないが、こういうのは、万年筆のインクをボトルから吸い上げる作業にも通じる感覚があるように思う。なお、オイルは揮発性のベンジンを用いるため、扱いには慎重を要するが、ちゃんとした大人なら問題なく使える。

 

一般的なサイズの白金懐炉はちょうどシャツの胸ポケットに入るくらいだが、1回のオイル補給で最大約24時間温かい。朝早くに家を出て夜遅くに帰ってきても、まだ温かいのは頼もしい。

 

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補給の仕方は簡単で、蓋をパカっと外したら、バーナーと呼ばれる部品を取り外す。中のプラチナ触媒を触ってしまわないように注意。オイルを計量カップで計り、バーナーを外したところから、中の綿に少しずつ染み込ませていく。

 

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入れ終わったらバーナーを付け、ライターなどの火をプラチナ触媒に近づけて、軽く炙る。このとき、バーナーを下に向けると煤(すす)が付いてしまうため、懐炉は普通に持ったまま、軽く傾ける。また、炙りすぎるとプラチナ触媒の劣化が早まるので注意する。経験的に、1秒も炙れば十分に反応が始まる。反応が始まるとプラチナ触媒から水蒸気が出る。眼には見えないが、金属製の蓋を近づけてみて、それが局所的に曇れば、反応が始まったと見てよい。

 

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反応が始まったら、蓋を付けて、布製の袋に入れる。すぐに温かくなるわけではないが、30〜60分もポケットに入れていると、驚くほど温かく(いやむしろ熱く)なってくる。

 

2つめのメリットである「ゴミが出ない」という点は、すでに述べたように、オイルが炭酸ガスと蒸気とに分かれてなくなるだけなので、反応の後には何も残らない。オイルは、ZIPPOオイル大缶(350ml)で700円くらい。小缶(133ml)で毎日使っても2週間くらいはもったので、コストは高いとみるか低いとみるか、微妙なところだ。オイル以外には、プラチナ触媒が付いたバーナー(700〜800円)を冬ごとに買い替えるだけでいい。

 

3つめのメリットとして発熱量の大きさを挙げたが、これは白金懐炉の最大のメリットであり、とにかく温かい。いや熱い。腹巻きの中に入れて使う人が多いようだが、腹(特に下腹部)を温めるのは理に適っている。俺も最近腹巻きと一緒に使い出した。特に指先や足が冷える人は、まず下腹部を温めるべきだという。これは昔テレビで得た情報の受け売りだが、そこには人間の生殖機能を司る臓器があって、末端に優先して血液を必要としている。いくら末端を温めても、下腹部が冷えている限り、末端の冷えは取れない。逆に、下腹部を温めてやれば、末端にも血液がいくようになり、冷えは取れるそうだ。懐炉は手に持って使うと全く温かくないが、ポケットや服の中に入れて密着させておくと、効果が抜群に高まる。白金懐炉は裸の状態では素手で持てないほど熱くなるが、厳しい寒さの中では、カバーを付けて、さらに腹巻きやポケットで服の上から密着させたとき、実に絶妙な温かさとなる。腹や背中以外には、首の後ろなども気持ちいい。

 

4つめのメリットとして挙げた、長時間発熱することについては、家に帰ってきてからもまだまだ温かいことなどから、使い捨てよりもよっぽど頼もしいと言える。ただ、途中で反応を止めることはできないので、すぐに次のオイルを補給したいときでも、オイルが切れて反応が自然に止まるのを待たなければならない。反応の途中でバーナーを外して無理やり反応を止め、オイルを補給することは不可能ではないが、それをやるとまだいくらか残っているオイルに加えて、つまり許容量を超えてオイルを入れてしまうことにつながりかねず、場合によっては本気で死ぬことになるだろう。だから白金懐炉は使い方によっては、非常に危ない。とはいえ、リスクというのは何事においても、その分に見合ったリターンを得るために犯すものである。リスクがあるというのは決して悪いことではなかろう。必要以上に怖がっていると、いつまでも小さなリターンしか得られない。

 

いま手軽に入手できる白金懐炉は、「ハクキンカイロ」か、ZIPPOのハンドウォーマーのどちらかだろう。俺はZIPPOの方を買った。どっちでもよかったけど、安いほうにした。アマゾンならオイルも計量カップもカバーも付いた一式が2400円くらいで売られている。俺が買ったのもこのセットだ。あとはオイルを買い足して、冬ごとにバーナーを交換するだけで、ずっと使える。持っていて楽しいし、何年も使い込まれた他人のを見るのもきっと楽しい。

 

使い方。とてもわかりやすい動画。

 

こういうスレッドも。

 

こないだ、この懐炉をある人に見せたら、「好きそうやな〜w」と言われた。うん、こういうの、たまらんね。こういう男臭いというか、アウトドア感溢れる道具はすごくツボに嵌る。気がついたらその人もすぐアマゾンでポチっていて、嬉しかった。これは流行る(確信)。

 

記事を書き終えた後、息抜きにRSSをチェックしていたら、話題になっているライフハックのエントリーとして、まさにハクキンカイロのことが書かれていた。これは流行る(確信)。