黒猫陛下の書斎

「試筆」とは、試し書きのことではない。

お洒落なクリップボード「スナップパッド」が小さなブームに

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ニューヨーク生まれの文具メーカー・ポスタルコが2011年に発売した「スナップパッド」というアイテムをご存じだろうか。これは一部の万年筆ユーザーの間で小さなブームになったことがあった。簡単にいえばお洒落なクリップボードなのだが、まさか自分がこれを買うことになるとは思っていなかった。不思議なもので、ある時急に欲しいと思い出したら止まらなくなってしまい、そのままゴールテープ(という名のクレジットカードを)切ってしまった。

 

スナップパッドとは何か

 

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スナップパッドとはポスタルコによる造語で、そのネーミングは明らかにアップルの「アイパッドiPad)」を意識している。1台で何でもできる、高機能の極限のようなiPadに対し、ただ紙を2穴で綴じるだけという堂々たる低機能ぶりのスナップパッド。ここまでくると逆に清々しい。初めは誰もが思うように、この程度の道具であれば、100円ショップのクリップボードでも十分代用できよう。

 

 

だがこれを見てほしい。夏の青空を抽出したかのような、鮮やかなマリンブルー。今夏出たばかりの新色である。見ての通り、上部にボタンが2つ付いており、これをパチンと外す(=スナップする)と、紙の追加・取り外しができる。このときの、ボタンをパチパチする音が何とも軽快で心地よい。この音と感触には、製作者もずいぶんこだわったという話である(*)。

 

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スナップボードは下敷きとなる板が縦に長く、ある部分で下から手前に折りたたむと蓋ができるようになっているので、書いたものを見られたくないときは蓋をしておけばいい。俺は蓋の開け閉めが面倒くさいので、紙と天板の間に折り込んで、蓋のない一般的なクリップボードとして使っている。

 

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サイズのバリエーションとしては、プレスコットン(布素材)のA4・A5サイズと、プレスボード(紙素材)のA4・A5・A6サイズの計5種類がある。A6サイズはプレスボードのみ。カラーは、プレスコットンが赤・黒・緑・青・水色の5色展開なのに対し、プレスボードは灰がかった青の1色のみ。お金に余裕があるのであれば、高級感のあるプレスコットンをお薦めしたい。プレスコットンは折り目が完全にフラットにならないと言われていてやや不安だったが、使ってみると全く問題なかった。

 

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スナップパッドの使い方

 

スナップパッドの使い方は、どうがんばってもクリップボードと大きく変わることがない。紙をセットしたら、あとは持ち歩くなり、デスクの上に置いておくなりするだけである。

 

それよりも問題なのは「何を書くか」ということだろう。俺も以前からモレスキンを使っているので、スナップパッドを買ったところで今更何を書けばいいのかわからなかった。モレスキンとの使い分けの仕方に悩んだのである。

 

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その結果、こういうことになった。モレスキンは製本されているので、どうしても「下書き」というよりは「清書」する感覚に近い。モレスキンでも間違ったらぐじゃぐじゃと消して書き直しているが、何も初めから間違うつもりでは書いていない。一方、スナップパッドは初めから間違うつもりで書ける。もともと要らない紙をセットしているのだから、ちょっと間違ったらちぎって捨てることができるし、そこには心理的な遠慮や後ろめたさがない。これは、俺が以前のエントリーで紹介した「トラベラーズノートの掟破りな使い方」と非常によく似ている。「間違ってもいい」という担保のおかげで、けっこうフリーな思考ができるのだ。

 

それを利用して、俺はよくマインドマップを書いている。マインドマップはもともとフリーな思考のためのツールだが、スナップパッドを使うことで、より簡単に枝を伸ばしていける。

 

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他にもいろんなことに使えそうだ。電話メモ、買い物リスト、to do リスト、ジョッター、文章の下書き、ペンの試し書き、計算、筆談、備忘録、本の抜き書き、作図、伝言、カッターを使うときの下敷き、TVを見ながらのメモ、プレゼン、打ち合わせ、授業のノート取り、壁掛けメモ、月間・週間・日めくりカレンダー、回覧板、交換ノート、絵日記、落書き、書道、電車内の簡易机など、活用の仕方は無限。

 

他のツールとの使い分け

 

スナップパッドは一次的な使い方(メモとしての利用)がほとんどではないかと思う。マインドマップで閃きを得たり、文章の下書きをしたりした後は、情報のメタ化(高次元化)が必要になる。そこではやはりデジタルなツールが便利だ。スナップパッドに書いたメモの写真を撮ってEvernoteにアップしたり、PCやポメラでタイプしたりすれば、情報が二次利用しやすい。

 

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ここ最近、俺は短い小説を書く作業に取り掛かっている。どんな筋書きでいくか、どんな設定でいくか、どんなメッセージを伝えるか、ということを、まずはマインドマップでできるだけ書き出してみて、そこから良さそうなものを拾っていく。別々に考えていた設定を組み合わせたり、絶対に必要だと考えていた設定を削ぎ落としたり。そういう予想外の選択が、けっこうフリーな思考のもとで成立してくると、嬉しくなる。

 

アイディアを出したり、考えを整理したりするのに、スナップパッドはすごく便利だ。そこから先は、別のツールに任せてもいいと思う。

 

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スナップパッドを買ってどうなったか

 

前からクリップボードは持っていたが、家でしか使っていなかった。スナップパッドを買ってからは必ず鞄に入れて持ち歩くようになり、出先でも時間があるとなんとなく取り出して作業している。これがあるのとないのとでは、割と大きな違いがある。ややこしい計算をするときに計算用紙が手元にあるとすごく安心する。それと同じで、考え事をするときにスナップパッドがあると落ち着く。これはクリップボードでも機能的には足りるが、モノにこだわる人たちにとっては、そうではない。見た目がお洒落というのは大事だ。「形」にはこだわらなければならない。

 

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文具で楽しいひととき

ポスタルコ スナップパッド

http://www.pen-info.jp/postalco_snappad.html