黒猫陛下の書斎

「試筆」とは、試し書きのことではない。

ダイアミン(Diamine)の古典インクを購入

ナガサワで取り扱われるようになったダイアミンのレジストラーズインク(ブルーブラック)を買ってきた。ラミー、ペリカンに次いで、3つめの古典インクである。容量はわずか30mlで、税込み1782円。ご存じのようにラミーもペリカンも超お手頃価格のインクなので、こんな高いインクを買うのは勇気が要る。もしこれが700mlのウイスキーなら、45000円ぐらいするのだ。ロイヤルサルートかよ。


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で、早速金色の箱を開ける。その小ささは、カメラのフィルムの箱と大して変わらない。中から出てくる瓶もまた小さく、初めから小分けボトルに入れているみたいな気分だ。その形とラベルのデザインは、R&Kにも勝るとも劣らない薬瓶っぽさ。「Made in U.K」の文字は、なんだか心躍る。瓶を光に透かしてみると、中のインクが意外に鮮やかな青をしているのに驚いた。


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蓋を開けてにおいを嗅いでみると、俺が「絵の具インク」と呼んでいるパイロットのあの地味なラベルのインクに似たにおいがした。成分的には異なるはずだが、どういうわけか同じにおいがする。まあこのにおいは特に嫌いではない。


他の人のブログでも書かれていたが、レジストラーズ(registrar's)とは「記録官の」という意味。「registrar」の定義は、オックスフォード英語辞典では第一義に「an official responsible for keeping a register or official records: the registrar of births and deaths(登記簿または公式文書を作成する任務を負う公務員。出生・死没の記録官など)」とあるが、実際に記録官が使用していた(あるいは現在でも使用している)かどうかはわからない。実際どの程度のインクなのかは、使ってみなければわからない。


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結論からいうと、全く期待を裏切らないインクであった。耐水性のチェックでここまで水に流れなかったインクは初めてだ。



そしてこの黒変の早さは尋常ではない。あんなに鮮やかな青が、書いて10秒も経たないうちに、みるみる色が暗くなっていく。30秒もすればかなり黒ずんだ青になり、数日置けばほとんど真っ黒になる。このように化学変化が顕著な理由として、古典インクに詳しいpgaryさんは「ペリカンなどに比べ鉄分が非常に多い」ためと予想している。



メリットもあればデメリットもある。これもpgaryさんの言っていることだが、ダイアミンの古典インクを使用する上で気をつけなくてはならないことは、まず第一に、インクが万年筆内部で固まってしまうと、水で落とすことができないという点である。もちろんそれは、自分で耐水性実験を行った今では、はっきりと自覚している。リスクを回避する方法はただひとつ、アスコルビン酸を用いた洗浄である。アスコルビン酸とはビタミンCのこと。薬局で誰でも手に入れることができる。ダイアミンを使い始めたので、俺もそろそろ買わなければならなくなった。ペリカンやラミーのブルーブラックは水の洗浄でどうにでもなっていたというか、洗浄しないでそのまま使いすらしていて、なおそれでも問題がなかったが、今回はそれではちょっとだめかもしれない。


要するにダイアミンのレジストラーズインクはこれまで俺が使ってきたどのインクよりも危険である。しかしリスクが大きいほど、リターンも大きくなる。ここまで黒変するインクは見ていて(使っていて)すがすがしい気分になるし、耐水性が完璧なレベルなのも実に頼もしい。


ナガサワで取り扱っているレジストラーズインクは30ml入のものだけだが、ナガサワの人がツイッターにアップした写真には、30mlよりも大きな容器が写っているように見える。



手元の30ml容器と比べて、少し縦長な気がする。画質が高くないため、ラベル右下に30mlと書いてあるのか50mlと書いてあるのかは判断しかねるが、50ml入のものがあるのかもしれない。ちなみに、Amazon.comでは100ml入のものもあった(*1)。パイロットの俗に言う「ポン酢瓶」(350ml入のインク)に比べると3分の1以下だが、十分でかそうだ。デザインはどちらもいい感じにダサい。


これが書いて数日経過した後の色。ここまで黒いのはすごい。同じく数日経過後のペリカンよりも断然黒い。


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