黒猫陛下の書斎

「試筆」とは、試し書きのことではない。

見た目だけで選んだら3本挿しペンケースの中身はどうなるか

カスタム74を使い始めてから特にこれといった不満もなく、「いま欲しい万年筆は?」と聞かれたら「ない」と答える。それくらい、この万年筆のことは高く評価している。

 

しかし、万年筆の世界は深い。購入するかどうかは別の問題として、いろいろ目移りしないわけではない。カスタム74の「完成された」(悪く言えば地味な)デザインとは反対の、きわめて装飾性の高い万年筆をかっこいいなあと思うこともときどきある。今日は見た目だけで選んだら俺のペンケースの中はどうなるかを考えてみたい。いま使っているのは1本挿しのペンケースだが、紹介するのが1本だけではちょっと物足りないので、3本挿しを使っているという設定でいく。

 

■見た目だけで選んだら3本挿しペンケースの中身はどうなるか(1本目)

 

ファーバーカステル伯爵コレクション

ペン・オブ・ザ・イヤー2014

エカテリーナ宮殿・サンクトペテルブルク

価格:420,000円〜1,000,000円

 

最近、いきなり目を奪われた万年筆はこれだった。宮殿の一間をイメージして作られたそうで、とても華やかで気品がある。今まで見てきたどの万年筆よりも美しい。胴軸を飾る赤や黄色の碧玉は、宮殿で使われていたものと同様らしく、さらに天冠部分にはミラーボールみたいにカットされたクォーツが光っていて、いちいちすごい。何より全体から漂う銀の質感と重量感。暖色系の碧玉とは対照的に、銀の冷たさを感じる。ぜひ、死ぬときはこのペンで刺されたい。

 

■見た目だけで選んだら3本挿しペンケースの中身はどうなるか(2本目)

 

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アウロラ

オプティマ・ブラックパール

価格:59,850円

 

この俺がイタ万を選ぶとは意外かもしれない。でもナガサワのショーウィンドウの中にあったこれをいくら眺めたかわからないのだ。その模様は1本1本違っており、眺めていて飽きることがない。暗いところで見ると墓石のようだが、光に当てると透明感が出る。キャップにラーメンどんぶりみたいな模様が入っているのがややアンバランスな感じがして、却ってよい。

 

■見た目だけで選んだら3本挿しペンケースの中身はどうなるか(3本目)

 

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モンブラン

ジョン・レノン スペシャル・エディション

価格:103,950円

 

去年の6月に、代官山蔦屋書店で実物を見たことがある。ピカピカのガラスケースに、それは鎮座していた。憧れのジョン・レノンと、馴染みの道具が一体化した、まさに夢。これを使うだけで、文体まで変わってしまいそうな気がする。ただ、その形から、ジョン・レノンっぽさはあまり感じられない。いったいどんなジョン・レノンを表現しようとしたのか。ジョン・レノンもいろいろとキャラを変えてきた。荒々しかったデビュー当時か? インドに傾倒していた中期か? ヨーコと結婚した長髪の後期か? 平和のために闘ったソロ時代か? いずれにせよ、モンブランが作ったジョン・レノンは、ちょっと洒落すぎている気もする。

 

というわけで、見た目だけで選んでみたら、いま持っているのと全然違うようになった。