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黒猫陛下の書斎

「試筆」とは、試し書きのことではない。

ガラスペンの魅力

「書けるガラス細工」ガラスペン

万年筆に似た道具で、ガラスペンというものがある。いわゆるつけペンの一種で、1902(明治35)年に佐々木定次郎という日本人によって考案された。その名の通り、ガラスでできている。いわば「書けるガラス細工」で、繊細で透明感があり、きらきらしている。総じて軸は細く、手に取るとひんやりしていて軽い。眺めていれば、差し込む光の強さによって軸の色が変わるのもきれいだ。特に「ひねりガラスペン」は人気が高い。「ひねりガラスペン」は軸に螺旋状のひねりが加えられている。くるくる回すと、それが固体であることを忘れてしまうほど、柔らかく、動きのあるものに見える。また、机に置いたときに聞こえる「キン」というガラス特有の音がとても涼しい。夏にはもってこいのペンといえよう。
 
 
 

ガラスペンの実力

万年筆と似ていると言ったが、ガラスペンも毛細管現象を応用している。ペン先にはいくつかの溝が掘られていて、これをインク瓶に突っ込んだときに、少量のインクが表面張力で溜まるようになっている。そのおかげで、字を書くことができるのだ。

実際にガラスペンを使って書いた文字がこれである。一度ペン先をインクに浸せば、これだけの量を書くことができる。ある実験では、ガラスペンの筆記距離が20mを超えた。毛細管現象を応用したガラスペンでなければ、こんなに長い距離を筆記することはできない。20mとは、驚くべき値である。

英文も書いてみたが、やはり一回でこれだけの文字を書くことができた。濃淡が出るあたりも、万年筆に似ている。

ガラスペンで書いた字は、国産の細字万年筆を使っている人であれば、やや太いと感じられるだろう。俺が使っているガラスペンは、国産万年筆の中細〜細字程度だ。アルファベットを書くにはちょうどいい太さだが、画数の多い漢字を小さく書こうとすると潰れてしまう。とはいえ、俺のM400(EF)よりは細い。これはなんということか。
 
 
 

ガラスペンは個体差が激しい

ガラスペンは見た目に美しいが、肝心の書き味については、個体差が激しい。それは言うまでもなく、ペン先の製造が職人の手作業によるものであることに由来する。職人の腕の如何によって、すらすら書けるものもあれば、まったく書けないものもある。したがって、ガラスペンは必ず試し書きをしてから購入しなければならない。通信販売で購入するなど言語道断で、万年筆以上にリスクの高い買い物であることは間違いない。

かく言う俺も、このガラスペンは人からもらったものなので、試し書きをしてから買ったわけではない。やはり、ペン先の先端に何らかの不備があるとみられる。ときどき困ったことに、書き始めてすぐ字がかすれてしまう。そんなときは、ちょっと軸を回して、紙に接する部分を変えてやる。そうすると異常のないところに当たって、またすらすらと書けるようになる。このとき紙に当たっている部分を、勝手に「クリティカル・ポイント」と呼んでいる。クリティカル・ポイントを一発で当てることができたときは、とてもうれしい。もっとも、本来はどの角度でもクリティカル・ポイントにならなければならないのだが。貰い物なので文句は言えない。

ガラスペンのいいところは、手入れが容易なことと、いろんなインクを気軽に使えることだ。万年筆と違って、インクを本体やコンバーターの中に入れておくのではない。ガラスペンの場合、インクはガラスの表面にくっついているだけにすぎないので、洗い流すことで簡単にインクを落とすことができる。これが万年筆であれば、原則として一晩の漬けおきが必要になる。手入れにかかる手間と時間は、どちらが少なくて短いだろうか。また、ガラスペンはペン先を洗い流せばすぐに次のインクを使うことができるので、多色使いがしやすいのも特徴だ。

そしてもう一つ、どんな成分のインクでも遠慮なく使えるという利点がある。鉄を腐食させると言われる強酸性の古典インクも、ガラスペンなら大丈夫だ。インクがついたままうっかり数日間放置してしまったという場合でも、洗い直せばすぐにきれいになる。「古典インクが気になるけど、ペン先へのダメージが心配で使えない」という人は、ガラスペンで使ってみてはどうだろうか。極端な話、墨汁や絵の具の水溶液など、万年筆に入れることがためらわれるような液体も、ガラスペンなら使える。

もう一度言うが、ガラスペンは店頭で買うのが望ましい。メーカーは万年筆ほど多くない。有名どころはトマージ、エルバン、ルビナート、アルバインターナショナルなど。日本にも菅清風や川西硝子というメーカーがある。俺が持っているのはアルバインターナショナルのもので、価格は2400円前後。高級品になると簡単に1万円を超えるが、だいたいのものは5000円もあれば買える。デザインはやはり、海外のほうが洗練されている(と思う)。

万年筆よりも装飾性の高いガラスペン。筆記距離はきわめて長く、実用性も証明済み。安価で使いやすく、また日本で生まれた筆記具なので、まだの人にはぜひ試してほしい。

以下参考に。

Wikipedia ガラスペン
http://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AC%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%83%B3

ペンハウス ガラスペン特集
http://www.pen-house.net/contents/html/tokushu/glasspen/

ナガサワ文具センター ガラスペンの使い方
http://www.kobe-nagasawa.co.jp/glass-pen/