黒猫陛下の書斎

「試筆」とは、試し書きのことではない。

ポメラで捗る日記術・読書記録術

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物書き用の最強デバイス、ポメラ

このブログの初めての記事「マシマロ」で書いたように、俺にとってポメラはすでに手放すことのできない道具だ。日記、読書記録、新聞メモ、メールや手紙の下書き、ブログの下書き、授業のノート取り、その他あらゆる文章作成にこれを用いてきた。

「ポケットメモライター」略して「ポメラ」とは、「キーボードによりテキストの入力を受け付け、それを記憶する機能に特化した、メモや文章作成を手軽に行うためのメモ専用機」(Wikipedia)だ。俺自身の言葉で端的に説明すれば、「メモ帳機能だけを残した、乾電池駆動の超小型ノートPC」とでも言えよう。

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もともと、大学の講義で膨大な筆記量に耐えるためにキーボード付きのデバイスを検討したのがきっかけだった。ノートPCは大きすぎて持ち運ぶのが辛いし、タブレットはハードウェアとしてのキーボードがないので、入力時にストレスになると考えた。

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ポメラはまさに俺が求めていたデバイスだった。筐体はノートPCよりはるかに小さく、持ち運びに適している。メールやブラウジングなどの通信機能を排除した分、執筆に集中できる。また、起動に時間がかからない上に、乾電池2本で長時間駆動する。さらに、書き上げた文章はQRコードを利用してスマホに転送することができる。

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初めてのポメラ(DM20)を購入したのは2010年3月31日。2年以上はDM20に世話になった。2012年4月9日に2台目(DM100)を購入し、現在に至る。1台目のDM20は、一応まだ手元に残してはいる。DM20(旧)とDM100(新)とを比較すると、携行性(小ささ)では圧倒的に前者が優勢だが、バッテリー駆動時間やタイピングのしやすさでは後者に軍配が上がる。どちらも一長一短なのが悩ましい。よって、DM100を大幅にアップグレードさせた「DM200」の登場を今かと待ち望んでいるのは俺だけではあるまい。ちなみにDM100の後にDM25というのが発売されたが、DM20の機能をわずかにアップグレードしただけの端末で、DM20と大した差はないそうだ。これからDM20を買うぐらいならDM25を選んだ方がいいというレベルの話になる。

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ポメラで何を書くべきか

ポメラを手にすると、とにかくいろいろ書いてみたくなるのだが、誰もが小説やブログを書くわけではない。そこでおすすめしたいのが、日記と読書記録だ。これなら誰でも書いているか、またはその必要を意識するのではないかと思う。経験上、日記や読書記録はポメラでつけるのが最も楽で効率がいい。

ポメラで日記や読書記録をつけることのメリットは、
(1)少ない労力で短時間のうちに書けること
(2)情報が取り出しやすい(検索性が高い)こと
(3)保存性に優れていること
(4)情報の再利用が容易であること
などが挙げられる。

まず、少ない労力で短時間のうちに書けることはとても重要である。一日の終わりにまた机に向かって日記や読書記録を書くのは非常に骨が折れるが、ポメラなら布団に入ったまま枕元でも書ける。本当に疲れている日は書いている途中で寝てしまうこともあるが、その場合は翌朝布団の中でまた作業を再開すればいい。ポメラは一定時間操作されない場合、自動的に電源がオフになるように設定できる。そのため、バッテリーの浪費は心配しなくてよい。もともとバッテリー駆動時間はノートPCに比べて圧倒的に長く、アルカリ乾電池の場合、30時間(公式値)も使える。

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よほど忙しい人でなければ、数回に分けて日記を書くこともできる。外出時はポメラを持って歩き、休憩がてら立ち寄ったコーヒーショップでそこまでの日記を書いておけば、次回はその続きからでいい。夜にまとめて一日分を書こうとすると、記憶が曖昧になっていたり、分量が多くなってしまったりして、何かと負担が大きい。「日記は夜にまとめて書くもの」という固定概念を捨てることができたのは、まさにポメラのおかげだった。

負担はさらに小さくできる。ポメラはPCと同様「ユーザー辞書登録」機能が使えるため、より少ないキータッチで文章を作成することができる。

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「すたば」と打って変換すれば「スターバックス」、「まくど」と打って変換すれば「マクドナルド」と出てくるようにする。同様に、最寄りの駅や勤め先、よく行く飲食店、好きな作家・音楽家などの名前を短縮読みで登録しておけば、入力速度はどんどん上がる。記号も然り。俺は新聞メモを取る際に「■」や「□」という記号を多用するので、「z」で「■」、「x」で「□」が出てくるようにしている。他にも思いついたときにどんどん追加しているので、かなり文章作成がすばやくできるようになってきた。まるで万年筆のペン先が持ち主の癖に合わせて馴染んでくるかのようだ。以下、俺のユーザー辞書の一部を紹介する。

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辞書登録の例
z8 → 『
z9 → 』
z/ → ……
z- → 〜
うえ → ↑
した → ↓
ufj → 三菱東京UFJ銀行
すみとも → 三井住友銀行
ようつべ → YouTube
あいふぉん → iPhone
dl → ダウンロード
とら → トラベラーズノート
m400 → スーベレーンM400
ぷろぎあ → プロフェッショナルギア
あどれす → xxxx@xxxx.com
いわなみ → 岩波文庫岩波新書岩波現代文庫
しんちょう → 新潮文庫
ちゅうこう → 中公新書
ふく → 福島第1原発
ほし1 → ★☆☆☆☆
ほし2 → ★★☆☆☆
oecd → 経済協力開発機構OECD
tpp → 環太平洋経済連携協定(TPP)
あんぽり → 安全保障理事会
icj → 国際司法裁判所(ICJ)
imf → 国際通貨基金IMF
ctbt → 包括的核実験禁止条約(CTBT

以上は一例にすぎないが、このようにユーザー辞書を作り上げていくことによって、より少ない労力で短時間のうちに日記や読書記録をつけることが可能になる。ちなみに、ときどき「z」で始まる読みを設定しているのは、意図しない場面での誤変換を避けるためである。「z」の代わりに別のキーを割り当ててもいいが、ホームポジションを体得している人は、「z」にしておくことをおすすめする。

第2のメリットは、情報が取り出しやすい(検索性が高い)ことだ。ポメラはテキストファイルをフォルダーに整理して入れておくことができる。

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SDメモリーカードに「Diary」「Lectures」「Drafts」「Reading」「Newspaper」という5つのフォルダーを作っている。言うまでもなく、日記は「Diary」フォルダーに、読書記録は「Reading」フォルダーに保存している。

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「Diary」フォルダーの中には「2009」から「2013」まで5個のフォルダーがある。そのうち、「2009」フォルダーの中には「200901」から「200912」まで12個のフォルダーがある。同様に、「2010」「2011」「2012」「2013」のフォルダにもそれぞれ12個のフォルダーが入っている。

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つまり、1ヶ月ごとにフォルダーを作り、さらにそれを1年ごとにまとめている。そうすることで膨大なテキストファイルを整然と管理でき、検索も容易になる。1日分の日記は1個のファイルとして保存するため、1ヶ月分のフォルダーの中には、30個前後のテキストファイルが保存される。

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読書記録も同様で、「Reading」フォルダーの中に「2009」から「2013」まで5個のフォルダーがあり、それぞれの中に12個のフォルダーがある。たとえば今月読んだ本の記録は、「Reading」フォルダーの中の「2013」フォルダーの中の「201304」フォルダーの中に入っているというわけだ。このように階層的に管理し、いつでもファイルやフォルダーを追加・削除・移動できることは、デジタルの大きな強みと言っていいだろう。これをアナログでやろうと思うとかなりしんどい。いやほとんど不可能に近い。

しかしながら、デジタルにはさらなる強みがある。俺が日記や読書記録をデジタル化する最大の理由は、何と言っても検索である。

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ポメラ内に保存してある日記や読書記録のファイルは、一定期間ごとにEvernoteの中に作った「Diary」「Reading」フォルダーにも保存している。したがって、iPhoneやPCなどでいつでも内容を検索することができる。たとえば「ウイスキー」で検索すればうまい酒を飲んだ日の日記が、「梅田 購入」で検索すれば梅田で買い物をした日の日記が、「李陵」で検索すれば李陵の儚い詩に涙が止まらなかった日の記録がほんの1〜2秒で抽出される。これがどれほどの利益をもたらすかは(いい意味で)予測不能である。

第3のメリットは、保存性に優れていることだ。せめてEvernote、SDカード、PCのローカルフォルダーの3ヶ所にファイルを置いておけば、よほどのことがない限りファイルは永久に保持することができるだろう。アナログの場合、紙が燃えたりなくなったりしたらもう取り戻すことができない。その点、複製が容易なデジタルは強い。写真を追加する場合もデータのままでよい。アナログ(紙)の場合は現像しなければならない上に、経年とともに色褪せる。

第4のメリットは、情報の再利用が容易であることだ。検索した日の日記をスマホやタブレットなどの端末上で読んだり、一部をコピぺでメール本文に貼りつけて送信したり、全文を印刷したりと、活用の幅が広く、簡単にできる。紙に書いたものであれば、せいぜい読むぐらいしかできないだろう。

特にキンドルとの連携は非常に魅力的だ。俺はまだキンドルを持っていないが、できるだけ早急に購入しようと思っている。その理由の一つは、日記ファイルをキンドルに同期することで、いつでも「自叙伝」を読み返せるという点にある。ポメラiPhoneキンドル、PC……いろんなデバイスを連携させると、どんどん便利になっていく。キンドルを買ったときのことを想像するだけでわくわくしてきた。
 
 
 

ポメラでどう書くべきか

というわけで、ここまでポメラで日記・読書記録をつけるメリットを見てきた。さて、ここからは、その具体的な方法や書式などについて書きたいと思う。

まず日記についてだが、俺は『日記の魔術』という本を参考にし、行動のみを記録することに決めている。内省は一切書かない。常に「XX:00、起床」で書き始め、「XX:00、就床」で終わる。その間にあるものもすべて行動の記録。言い換えれば、場所と時間の記録だ。「いつ」「どこで」「何を」だけを淡々と記録していく。それが俺の日記だ。

それ以外に説明することはないのだが、強いて言っておくならば、日付の書き方は統一した方がいいだろう。つまり、「2013年4月25日」「4/25」「4.25」のように、日によって日付の書き方が異なる場合、検索の際に必ず取りこぼしが出てくる。そのため、自分なりの日付の書き方を一つに絞っておき、それ以外の書き方では書かないようにする。そうすれば検索性がぐんと上がる。また、文章中に「昨日」や「来週の月曜」といった文言が出てきた場合にも、直後に括弧付きで日付を付け加えておくと、検索性は一層高まる。たとえば、「来週の月曜」を「来週の月曜(20130429)」とするのである。

あと、日記を書く際に役に立つツールとして、iPhoneの人にも、Android OSのスマホの人にも、「瞬間日記」というアプリをおすすめしたい。

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このアプリは読んで字の如く「瞬間的に日記をつける」ことに特化した便利なアプリだ。「スタートページ」を「編集モード」に設定しておけば、起動すると同時に文章入力モードになる。

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たとえば家を出るときに、アプリを起動して「家を出る」とだけ入力すれば、それだけで何時何分に家を出たかが記録できるというわけだ。そうすれば、スマホをポケットから取り出すところから数えても10秒以内にログが取れる。

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このようにして、外出先での行動を随時記録しておく。そして日記を書くときにはそのログを参照しながら時系列に行動をまとめていくだけなので、本当に楽に日記が書ける。

もう一つ言っとくと、店で買い物や飲み食いをしたときにレシートをもらわないということはあり得ない。レシートには店の名前、電話番号、住所、買った商品の名前、価格、買い物をした時刻がきちんと書いてあり、日記を書く上で便利なことこの上ない。ちなみに、レシートは財布の中で溜まっていくと見苦しいので、メモと一緒にしてトラベラーズノートのゴムバンドに挟んでいる。

参考記事
http://ochsk.blog.fc2.com/?no=9

では続いて読書記録について。読書記録は、とにかく「早く書く」ことに主眼を置く。1冊5分を目標にし、思ったことをだらだらと書かないように注意する。いわんや、あらすじや抜き書きなどを書く必要はまったくない。書くことは以下の8項目で十分である。

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・著者
・本のタイトル
・出版社
・本を買った日
・読み始めた日
・読み終えた日
・評価
・一言

これだけ書いたら、次の本を決める。決まったら、新しい読書記録ファイルに「著者」から「読み始めた日」までを書いて、早速読み始める。

ちょっとした工夫なのだが、「本を書った日」「読み始めた日」「読み終えた日」はすべて6文字。そのあとにコロン(:)を追加して日付を書くと、縦の列が揃うようになっている。

評価は5段階にしている。ユーザー辞書に登録してあるので、「ほし1」と打って変換すれば「★☆☆☆☆」と出る。1個ずつ星を入力する手間は不要。

一言の欄も、特に感想が思いつかないのであれば本当に一言でいい。「面白かった」「面白くなかった」「10年後にもう一度読みたい」など。

「アスノート」というブログではさらに大胆な「A書評」のやり方が書いてある。興味深い。

《Asu》美崎栄一郎「結果を出す人」はノートに何を書いているのか を読んでさっそく実行した3つのアクション
http://asunote.jp/2013/04/misaki-books-my-3-action/

なお、ブクログ読書メーターなどの読書管理ウェブサービスを利用する場合でも、それとは別に読書記録をつけておいた方が得策。というのも、そのようなウェブサービスは独自のアカウントでログインしなければ利用することができないからだ。Evernoteですべてを検索できるようにしておいた方が、情報は見つかりやすいと思う。

すべてはポメラへの入力から始まる。俺は万年筆のようなアナログツールの愛好家でありながらも、ポメラiPhoneなどのようなデジタルツールも大好きだ。日記や読書記録は、ライフハッキングの主要概念である「時短」が何よりも求められる習慣だと思う。だからこそ、ここはデジタルの恩恵を思いっきり利用する。万年筆でゆっくりと字を書きながら自分と向き合う精神性は、別のところで楽しめばいい。たとえば、手紙とか。
 
 
 

とりあえずポメラを買ってみればいい

とまあ、こんな感じで、提案したかった日記と読書記録のつけ方は以上だ。この通りにやろうと思うと、ポメラ、スマホ、Evernoteのアカウント、PCが必要になり、誰でもできるというわけではないのだが、ポメラさえ買えばたいていの人は要件を満たすだろう。この(ずぼらな)俺が何年もこの方法で書き続けてこられたので、たいていのずぼら人間ならこの方法で大丈夫のはず。

ポメラDM100・DM25はアマゾンで購入できる。DM100はこちら、DM25はこちら
 
 
 
[1] 文士・事物起源探究家松永英明絵文録ことのは
Amazon Kindle(アマゾン・キンドル):「反射光の電子ブック」という革命的に新しいメディア」
http://www.kotono8.com/2009/12/28amazon_kindle.html

[2] チラ裏ブログ
【1冊3分】テキストファイルをKindle Paperwhiteに最適化して表示させる方法(表紙・目次付)
http://nyx.hiho.jp/log/book/ebook/255/

[3] ITメディアエンタープライズ
Amazon、Kindle向け電子書籍販売がリアル書籍を超えたと発表
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/0912/28/news013.html

[4] 日本経済新聞 ウェブ刊
授業用タブレット全小中学生に配布 東京・荒川区
http://www.nikkei.com/article/DGXNZO51633760S3A210C1L83000/
http://www.peeep.us/2936cba5(キャッシュ)

[5] ナナショク
気になる箇所に付箋を貼る人必見! Kindleに付けたハイライトをPCで見る方法
http://7shoku.com/blog-248/

[6] アスノート
《Asu》KindleEvernoteで作る自分だけの読書ノート
http://asunote.jp/2013/04/kindle-to-evernote/